目が覚めて時計を見る。
マネージャーからの連絡に返答を済ませ、冷蔵庫からフレンチクルーラーを取り出す。リモコンを手に取り、ふと思い出し、また元の場所に戻す。
久しぶりに使うコーヒーマシンは、埃を被っていた。無骨な手で埃を拭い、慣れない動きで棚からカップを取り出す。
「ほんまは…大して好きやないねんけどな…」
フレンチクルーラーを口に放り込み、コーヒーで流し込む。
家を出ると、スタッフが待っていた。
「おぉ、ご苦労さんです。」
いつも通り、軽く挨拶を済ませ、車の後部座席に身を委ねる、軽く台本に目を通すが、いつものように流れていかない。
「ほんの少しも、立ち止まっては…いられないよな。」
ちょうど台本を読み終えた頃、目的地に着いた。
少し早めに着いた為、タバコを吸う為に喫煙所に向かう、あの頃は番組中でも平気で吸っていたというのに、今では楽屋ですら吸うこともできない。
目線も上げないままで喫煙所にたどり着く。今日は誰もいない。
「時代が変わったってことなんやろな…俺らもいずれ…」
久しぶりに紙巻を吸ったこともあり、少し、手間取ってしまった。火を付けながら、吸い初めた頃を思い出した。こうして野次が飛ぶことも、珍しいことではなかった、あの頃はお笑いしかなかったが、今では妙な所から野次が飛んでくる。
2人の笑いだけが全てだと思っていた、ただあの頃は、そのことだけしか見えなかったのかもしれないが─────
「それでも、今は。」
今夜もまた、走り続けなくてはならない、そうしなければ、この灯火が消えてしまうような気がしてならない。
きっといつか落ち着く日が来るのかもしれない、それが良いか悪いかなんてわからない、でも、その時は、温泉にでも行こう。